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知的資本戦略

1.多様化した雇用形態

人材の雇用形態がますます多様化している。今までの正社員中心から短期契約社員、パートなどの臨時雇用、派遣社員、専門家との顧問契約、一括業務委託契約に至るまで多岐に渡っている。これには、二つの理由がある。ひとつは、企業がもはや固定費としての正社員人件費を支払えなくなってきたこと。もうひとつは、激変するビジネス環境の中で企業が勝てるビジネスモデルを実行していく上で、社内の均質な人材だけでは立ち至らなくなってきたこと。異質のプロフェッショナルへの需要、あるいはプロジェクト期間だけの有期雇用が最適な選択になってきたのである。就業者の立場からこのような就業構造の変化は不安定と映るかもしれない。しかしながら、これからは、このような多様化した就業形態が常態となることを認識する要がある。常ならぬ雇用の不安定こそ今後の姿である。


2.知的資本の外部調達

昔、企業のライフサイクルはおよそ30年と言われてきたが、現在ではそれが15年に短くなってきた。最近の米国では、ひとつのビジネスモデルが使い物になるか否かの見極めをつける日数は35日と言われている。
中国の脅威を挙げるまでもなく、グローバル化が進展し、競争は一段と厳しいものとなっている。技術革新が日進月歩で競争のルールに変化を及ぼし、昨日の勝者が今日の敗者になってしまう。わが国の命題は、強烈なグローバル競争に勝てる能力を身につけること。商品・サービスの高付加価値化を追うことだ。いち早く開放された市場で世界と戦ってきた日系企業で生き残っているところは、筋金入りで十分競争力がある。一方、国内の閉鎖市場で規制に守られてきたところは、本来の競争を忘れてしまい舞台からの退場を迫られている。この帰趨は明らかである。資本の論理からは当然の帰結である。
日本企業は、その強烈な進化のスピードに対して資本設備の自前調達主義を標榜し、連携や買収などの外部シナジーにより資本設備や知識獲得をスピードアップする概念が脆弱。
例えば、現在は過剰在庫が解消されないで未だ回復の兆しが見えない米国通信機器業界最大手のシスコ・システムズではあるが、調達巧者のシスコがマーケットでドミナント・ポジションを得るために、シスコが選択するM&Aは、参入領域でリーダーになるための人材、製品、技術などの必要な知識すべてを調達するための手段として位置づける。
知識調達手段である採用・買収・合弁会社設立・提携・アウトソーシングなどに何を求めるか。人材(タレント)調達・知識(ノウハウ)調達など知的資本調達で一歩先んじてマーケット・リーダーシップを握るという明確な戦略をもっている。最終的にグローバル市場競争を制するのは、その時々の有用な人材、知的資本獲得(Knowledge Management)に尽きる。
ビジネスモデルのシーズになる知識はどのような方法で見つけるのか。必要な知識を分析し、重要度を把握しチェックする方法をとる。知識の特徴を形態、体系、タイプ、レベルの観点から、次にそれぞれの知識の固有性を差別性、模倣性、連結・統合性の観点から、さらにそれぞれの知識の価値を重要性、実用性、十分さの観点から分析する。最終的にそれぞれウェイト付け、あるいは優先順位のランキングをする。
さらに、知的資本、人的資産を評価、調達するには、まずどのように考えるか。どういう人材がこの企業に中にいてどういうポテンシャルがあって、それをどのように使えば何ができるのか。もしくは何かをやるためにはどのように人を使ってどういう人間が必要でそういう人間がいるのかいないのか、適材がいなければ知的資本(ひとつのパーツ)として外部から調達する方法をとる。

国内ハイテク企業:

自前主義を標榜し、知識獲得戦争に戦略なく参加し、範囲を絞らずに総花的に技術開発投資を続けてきた。投資が実を結ばないのは当然の帰結である。
一方、米国の優良企業は6割が単一事業型で、的を絞った上で外部知識を活用する戦略をとり、ROIを高めている。
先行する日系企業がいまなおシリコンバレーにオフィスを構える最大のテーマはやはり生き残り、差別化を賭けたけた新技術、バリューネットワークつくりである。分業・調達ロジックを追求し、より顧客接点に近い下流工程をも外部委託する。コアビジネスが何かを見極め、それ以外の分野は切り捨て、外部調達するという目利きがうまい。

医薬業界:

知識調達の先端業界で合理的判断が根付いている。ゲノムビジネスへの投機
過熱や国際的な企業の合従連衡など盛んだ。特化すべき領域の選定と評価眼を持ち続けることが大切になる。ひとつは自社でどこまで賄えるか。どの分野で事業を広げどの部分をアウトソ-シングするか。もうひとつはその提携分業をROIに沿って戦略作りだ。ゲノムベンチャーへの投資過熱で、一時期、得意領域に見究めて収益還元観点からの根付けが狂いそうなときがあった。ゲノム創薬の場合、ジーンハッキングは無意味であり、それから読み取る病因のバリデーションを見つけなければならない。しかしバリデーションに特許がついた時点ですべて無効になってしまう。したがって今では無駄うちは下火になっている。

IT業界:

いま、IT企業ではクライアントに対して単に一部の技術上の問題に対する対処では立ち至らなくなり、競争優位を築くソリューション営業、問題解決型営業への転換が課題になっている。顧客の経営やビジネス上の重要な課題を解決するための商品やサービスを提供するための営業活動だ。売り手側に顧客の問題解決のためのノウハウ、経験が蓄積されるので、顧客の現場や勝手を知り尽くしたパートナーであるためクライアントは簡単には切り替えられない。
IT業界では、これまでのIT技術提供から顧客課題解決へと進化している。この営業形態は営業担当が顧客とのコラボレーションのシナリオを描き、顧客の問題解決のために自社の問題解決能力や手法を総動員するプロセスになる。担当者の質によってもたらされる解決策やその成果が大きく違ってくる。このようなタイプの営業はいくらでも付加価値をつけられる営業形態なので、IT企業はソリューション営業に的確な人材の育成、外部調達を急いでいる。


3.プロフェッショナルの価値:"Attitude, Not Ability"

米国で教育程度やスキルレベルの高いプロフェショナルと呼ばれる人たちは、能力やスキルを重視するあまり、仕事に対する基本的態度を見失ってしまっている人が多い。
本来バランスのとれた優秀な人格陶冶を大学で学ぶことを目的にしたアイビーリーグ入学が本来の意図された選抜と全く違ったものになっていて、単にビジネス・スキルを身に付け、一流企業、年収の高い会社へ就職するためのパスポートになってしまっている。
彼らの役割は、崇高な志を持ち、人格陶冶に励み、自己の使命(Mission)を感得して、国際社会のさまざまな課題解決に貢献することではないだろうか。
今日、米国に学ぶ価値は、創造力、感性を醸成する環境があることだ。企業にとって個人は、どれだけ付加価値をアウトプットし続ける存在(Employability)か、個人にとって企業はどれだけ個人を高める環境を用意することができるか。その交点に両者に意味のあるWin-Winの関係を築くことができる。
会社に自らのキャリアの行く末を依存し続けることは不可能であり、依存から自立へ脱却し、個人は自らの責任で付加価値を生む自己のコンピタンシーとは何かを見つめなおし、育てて自らキャリアを開拓していかなければならない。したがって、キャリアディベロップメントは個人が本質的に気づくことが前提になる。


4.知的資本戦略

経営面では、人的資本のリニューアルにより、劣化しない人的資産を維持し、優位な付加価値経営を推進する可能性を追求できる。一方、個人としては、キャリア形成には、自分たちの未来を養うもの(革新資本)は何か。それを得るために自分たちのどんな能力を向上させる必要があるか。・・・を見極めて、仕事を継続的にリニューアルすることにより、その時点での市場価値のあるキャリアを獲得することができる。
業務経験から人は多くを学ぶ。Off-JTといかに融合できるのか。各自自分のなかにあるものに気づき、今後どうしていくかを設計する。変化を起こすことができるのは、本人だけだ。マネジメントは、個人に対してそのEmployabilityを援助するに過ぎない。

<研修>

STEP1:経験から学ぶ基本を知る。それには何が必要かという知識を得る。現在の自分を知る。これが出発点。

STEP2:なりたい自分を知る。それにはどのような経験が必要なのかを知る。自分が目指す像、自分のすべき経験を宣言する。

<フォローアップ>

STEP3:あなたはそのなりたい自分になれましたか?何が足りないのですか?宣言した経験はちゃんと積んでいますか?


5.欧米企業の知的資本戦略

Citigroup Inc.

仕事経験より学ぶという幹に研修と個人学習を交えた実践的リーダー開発。
リーダーシップディベロップメントチャート:
1. Formal(企業内研修)
2. Experience(仕事経験からの学習)
3. Personal(個人的経験からの学習)
向かうべき方向を確かめそのための戦略を練りそこから必要なリーダーシップを業務重視で開発するプログラム。

Fidelity Investments

ビジネスの変化が激しい現在、現エグゼクティブはもちろん、次世代リーダーを育成することがビジネス戦略上、必須の課題。最初は後継者育成から。候補者のプロフィールに合わせて、リーダーシップ開発に必要な経験が提供された。またポジションごとに成果を上げるにはどんなスキルや能力が必要か、またそのポジションでの経験から何を学び取れるかということを調べ今後の配置に利用。

UBS AG

おびただしい合併の結果、企業統治のプラットフォームとしてリーダーシップ開発が必要。全社共通なリーダーシッププリンシパル(方針)を実現するために必要なリーダーシップつくり。UBSを卓越した商品・サービスに加えて、卓越したビジネスリーダーを生み出す企業に。アメリカ型ではなくグローバル型を目指す。

Microsoft Corporation

次世代リーダーの養成の優先順位を高め、人事異動、研修に全社を上げて注力。
ジョブ(仕事経験)・プロジェクト・ローテーションによるリーダーシップ開発70%がOJT。20%が人間関係。10%が研修プログラム。仕事経験にフォーカス。

IBM

リーダーシップ開発も戦略と合理性重視。5倍の内容を3分の一の費用で運営。サービス主流のソリューション企業へと変身。
1. あくまで速習と成果を機軸とした、形だけの雰囲気的満足は割愛。
2. 世界中で活用できるような確固とした共通性のある要素。

Hewlett-Packard

組織の分離と再編がきっかけ。HP Wayも高い評価。
コーチングとメンタリングの強化。
創業時のガレージ・ルールに戻ろう:
世の中は変えられると信じる。一人でやるべき仕事か。チームでやるべき仕事かを見極める。アイディアを共有し、仲間を信じる。仕事を評価するのはお客様。奇抜なアイディアを悪いアイディアと決め付けないで。力をあわせれば何でもできると信じる。常に新しいことを創り出し、発明する。

Merk

各階層でリーダーを育てる方針と精緻なリーダーシップモデル。
個人のニーズに合わせたリーダーシップ開発。従業員のポテンシャルとビジネスパフォーマンスの最大化がHRの役割。


6.知的資本戦略を超えて

企業はいま組織を構成し、事業戦略を構築し、企業目標を達成する主体であるヒトの価値を高めようとして、On the Job/Off the Job Trainingに時間とコストを費やしてきている。しかしながら、これらの施策はどの程度の効果をもたらすのであろうか。単にスキルやリーダーシップ開発というような機能面での強化では、現在の複合的かつ激変する企業課題に対処することはできない。
企業がなすべきことは、むしろ企業組織、家族、コミュニティなど諸々の関係から社員を隔絶させて、個人としての自己を浮かび上がらせることである。「自己」の探求である。己を見つめ直す機会をつくることである。諸々の事象には機縁があり、それぞれ人生にはやらなければならぬ旬があることを悟ることだ。論理万能の世界から解放されて、情の意味深い世界を感得すれば、いままでと違う新たな世界が見えてくるだろう。昆虫のような完全変態を遂げることで、自分を脱皮させ「自己転生」を果たそう。
そのとき価値を置くのは、一方には、情熱、勇気、忍耐、不撓不屈の精神、人間の本性、原初的なものであり、他方には、自己練磨、人格陶冶、古典理解、教養、智慧である。
企業は変革の主体である「ヒト」の個人としての価値を高められるような環境を用意することであり、ヒトは、生きる意味と目的を知る智慧を感得することである。